補助金の申請支援、依頼する前に確認したい5つのこと|元・支援会社の中の人が書きます
補助金の申請を誰かに手伝ってもらおうと考えたとき、多くの方が最初に戸惑うのが「誰に頼めばいいのか分からない」ということではないでしょうか。
検索すれば支援業者はいくらでも出てきます。営業の電話がかかってくることもあるでしょう。ただ、どこも似たような紹介文が並んでいて、何を基準に選べばいいのかは、外からは見えにくいと思います。
この記事は、特定の業者を批判するためのものではありません。 誠実に仕事をされている会社はたくさんあります。
ただ、この業界には、依頼する前に判断材料がそろいにくい構造があります。何を聞けばいいのかが分からないまま、契約に進んでしまう。それを知っているかどうかで、依頼するときの見え方はかなり変わります。
私は独立する前、補助金の申請支援を主力事業とする中小企業診断士事務所に在籍していました。 支援する側の内側で、案件がどう生まれ、どう進み、どこで終わるのかを見てきました。
その経験から、依頼する前に確認しておくといいことを5つ挙げます。
1. 「申請代行」と「申請支援」は、違うもの
補助金の申請書類を、事業者に代わって作成し提出する行為は、行政書士法との関係が問題になり得る領域です。そのため、中小企業診断士が行うのは一般に「経営計画の策定支援」や「申請の支援」という立て付けになります。
つまり、
- 計画を考え、書き、責任を持つのは事業者ご自身
- 支援者は、その作業をご一緒し、助言する立場
という関係です。
「丸投げでOK」をどう考えるか
「丸投げでOK」「全部おまかせ」という打ち出しは、集客の言葉としてよく見かけます。私は、これを頭ごなしに否定するつもりはありません。
当事務所も、ご相談の入口としては、喜んで「丸投げ」でお受けします。 補助金まわりの予備知識がまったくない状態からのご相談も歓迎です。むしろ、そこから始まる方のほうが多いくらいです。
ただ、お話を進めるなかで、補助金を通じて何を成したいのか、どう事業を伸ばしたいのかという具体策を、どうしても一緒に突き詰めることになります。その意味で、最後まで丸投げのまま、ということにはなりません。
なお、申請作業そのものを代わって行う「代行」については、当事務所では取り扱っておりません。 行政書士の先生方の領域だと考えているためです。必要な場面では、信頼できる先生をご紹介します。
これは、法律の話だけではありません
補助金は、採択されてからが本番です。事業を実際に回すのは、事業者ご本人です。
計画の中身をご自身の言葉で説明できない状態で採択されると、実績報告の段階で必ず苦労します。「この経費は何のために計上したんでしたっけ」という状態から書類を作るのは、想像以上に大変です。
だから、計画を突き詰める作業は、遠回りに見えて近道です。当事務所がお打ち合わせに時間をかけているのは、この理由からです。
2. なぜ「その補助金」を勧められるのか、構造から考える
ここからが本題です。
補助金の支援を事業として行う場合、収益は多くのケースで次の式になります。
着手金 + 補助金額 × 成功報酬率
つまり、補助上限額が大きい補助金ほど、支援する側の売上も大きくなるのです。
たとえば同じ手間をかけるなら、補助上限50万円の制度より、補助上限1,000万円の制度を提案したほうが、支援会社の収益は何倍にもなります。
これは善悪の話ではなく、単に事業としてそうなっている、という事実です。
先に、ひとつはっきりさせておきます
補助金制度を知ったことがきっかけで計画が動き出すのは、まったく健全なことです。
知らなかった手段を知れば、取れる打ち手は増えます。増えた選択肢を踏まえて進む道が変わるのは、経営判断としてむしろ自然です。「補助金ありきはおかしい」と言うつもりは、私にはありません。
実際、私が前職で受けていたご相談も、両方向がありました。
導入したい設備が先に決まっていて、それに合う制度をお探しするケース。逆に、まず自社の業態に合う制度を知りたい、というところから始まるケース。どちらも入口として自然です。
共通していたのは、知識と手段と実行の間にあるギャップを、どう埋めるかという部分でした。
制度は知っているが、自社にどう当てはめればいいか分からない。やりたいことははっきりあるが、それが制度の要件に合うか判断できない。そもそも、何ができるのかを知らない。
どこで詰まっているかは、事業者の方によってまったく違います。 だから、決まった型で進めることはしていません。
私が初回にお聞きしていること
最初の面談では、補助金の話をいったん脇に置いて、こんなことを伺っています。
- いま、いちばん困っていることは何ですか
- それは、いつ頃から続いていますか
- お金が自由に使えるとしたら、何から手をつけますか
- 逆に、お金では解決しないと感じている部分はありますか
制度の話は、この後です。
順番を逆にすると、その制度に合う理由を後から探す作業になってしまいます。書けないことはありませんが、たいてい計画に無理が出ます。そして無理のある計画は、採択された後で自分に返ってきます。
確かめておきたいのは、その先です
面談の前でも後でも構いません。一度、ご自身に向けてこう置いてみてください。
なぜこれをやるのか、補助金の名前を使わずに説明できるか。
「補助金が使えるから」以外の理由が出てくるなら、それは自社の計画です。人手が足りない、この設備がないと受けられない仕事がある、看板を出したい場所がある。そうした言葉が出てくれば、どの制度で進めることになっても、話の芯はぶれません。
出てこない場合も、判断が間違っているわけではありません。まだ言葉になっていないだけです。そして、そこを一緒に埋めていくことが、本来の支援だと思っています。
3. 着手金ゼロは、親切とは限らない
「着手金無料・完全成功報酬」という打ち出しをよく見かけます。
事業者にとっては、初期費用がかからず一見ありがたい仕組みです。ただ、これにも構造があります。
支援する側から見ると、着手金ゼロは不採択だった場合に売上がゼロになるということです。こうなると、
- 採択されやすい案件を優先する(=難しい案件は後回しになりやすい)
- 数をこなす必要が出る(=1件あたりの時間が短くなりやすい)
- 成功報酬率が高めに設定される(=トータルの支払額は増えることがある)
といったことが起きやすくなります。
一方で、着手金がある場合は、採択・不採択にかかわらず費用が発生します。事業者にとっては痛みがあります。
報酬体系については、どちらが良い悪いということはないと考えています。 大事なのは、どのような契約で支援を受けることになるのかを、着手前にきちんと把握しておくことです。
確認するとよいこと
契約の形を確かめるには、この2つを聞くのが早いです。
採択された場合、最終的な支払総額はいくらになりますか?
成功報酬は、いつ支払うことになりますか?
2つ目は特に重要です。補助金は「申請 → 採択 → 交付決定 → 事業実施 → 実績報告 → 入金」という流れで進み、着手から入金まで1年近くかかることもあります。
補助金が振り込まれる前に成功報酬の支払期日が来る契約だと、その間の資金繰りをご自身で用意する必要があります。 これは知らずに契約すると、後で効いてきます。
不採択だった場合にどうなるのかも、あわせて確認しておくと安心です。
4. 「採択率」の表示を、どう読むか
「採択率90%以上」といった表示をよく見かけます。
数字そのものを疑う必要はありませんが、読み方は知っておいたほうがいいと思います。
母数が書かれているか
10件中9件と、200件中180件では、意味がまったく違います。率だけが書かれていて件数がない場合、それが何を指しているかは分かりません。
いつ時点の、どの制度の話か
補助金の採択率は、制度によっても、公募回によっても大きく変わります。同じ制度でも、公募回によって申請件数が倍近く違うことがあります。
もともと採択率の高い制度ばかりを扱っていれば、数字は自然と高く出ます。
「保証」と書かれていないか
これは特に注意してください。補助金の採択を保証することは、原理的にできません。 審査するのは事務局であって、支援者ではないからです。
「必ず通ります」と言い切る相手には、なぜそう言えるのかを聞いてみてください。
私自身の数字も、同じ基準で書いておきます
人に基準を示しておいて、自分だけ曖昧にするのは筋が通らないので、書いておきます。
これまでに申請支援を行った案件は十数件で、いずれも採択をいただいています(2026年8月時点)。
ただし、これはこう読んでください。
- 母数は十数件です。多くはありません
- 扱った制度は、小規模事業者持続化補助金やIT導入補助金、東京都内の補助金が中心です
- 今後、不採択になる可能性は当然あります
- したがって、採択をお約束するものではありません
私にできるのは、採択の可能性を上げるための準備を、丁寧にご一緒することだけです。
5. 採択された後、どこまで付き合ってもらえるのか
最後が、私が一番お伝えしたいことです。
補助金の支援は、採択が決まった時点で区切りになりやすい仕事です。成功報酬という仕組み上、そこで役割が完了するからです。
けれど、事業者にとってはどうでしょうか。
採択は、お金を使う許可が出ただけです。 そこから、
- 交付申請の手続きをして
- 実際に設備を入れ、販促を打ち
- 現場に定着させて
- 実績報告をまとめ
- そして売上につなげる
という工程が残っています。むしろこちらのほうが長く、難しいと見ることもできます。
実際にあったこと
前職で、こういうご相談を受けたことがあります。
採択までは別の支援者に依頼されていた事業者様が、実績報告の段階から当方に引き継ぎでご相談に来られたケースです。
お話を伺うと、その方は採択後にどのような手続きが必要になるかを、ほとんど意識されていませんでした。 悪気があったわけではありません。採択されるまでは、そこまで考える余裕がなかったのだと思います。
結果として、「思っていた倍以上の苦労があった」とご本人が振り返っておられました。
私が補助金をどう捉えているか
私は、補助金を「事業成長のために使うお金の、割引制度」だと捉えています。
割引そのものが目的になることはありません。問われるのは、そのお金で立てた計画を、実際に実行できたかどうかです。
採択を取るためだけに整えた計画書でも、書類としては通ることがあります。ただ、そこに売上が伴わなければ、かけた時間とお金は何のためだったのか、という話になります。
だからこそ、実行できる計画をあらかじめ練り上げておくこと。 あるいは、計画をもとに伴走しながら、実行まで支え続けること。 このどちらかが必要だと考えています。
確認するとよいこと
採択された後は、どこまでお付き合いいただけますか?
実績報告まで含まれるのか、その先の実行支援まで見てもらえるのか。契約前に聞いておくべきことです。
もし「そこは別料金です」という答えでも、それ自体は誠実です。曖昧にされることのほうが、後で困ります。
まとめ:依頼前に確認したい5つのこと
印刷するなり、メモするなりして、面談の際にお使いください。
なお1つ目は、相手に聞く前に、まずご自身の中で答えを持っておくと良いでしょう。
| # | 確認すること |
|---|---|
| 1 | なぜこれをやるのか、補助金の名前を使わずに説明できるか(→ そのうえで「この制度がうちのやりたいことにどう合うのか」を聞く) |
| 2 | 採択された場合、最終的な支払総額はいくらか |
| 3 | 成功報酬は、いつ支払うことになるか |
| 4 | その採択率は、何件中何件の話か |
| 5 | 採択された後は、どこまで付き合ってもらえるか |
この5つに、はぐらかさずに答えてくれる相手なら、少なくとも構造を理解したうえで仕事をしていると考えていいと思います。
逆に、質問した瞬間に話をそらされたり、「そこは大丈夫です」で終わったりする場合は、もう少し慎重になってもいいかもしれません。
おわりに
補助金の支援を選ぶというのは、書類を作ってくれる人を選ぶことではありません。
どこまでを誰がやるのかを、決めることだと思っています。
採択の連絡が来た日は、いちばん嬉しい日です。ただ、その先には交付申請があり、設備の導入があり、現場への定着があり、実績報告があります。売上が動くかどうかは、そのもっと先です。
その工程を、自社でやるのか、誰かに頼むのか。どちらでも構いません。 社内に手が空く方がいるなら、申請支援だけを依頼して、あとはご自身で進めるのは十分に合理的な判断です。費用も抑えられます。
困るのは、分担が決まらないまま採択日を迎えてしまうことです。「そこまでやってもらえると思っていた」と「そこは含まれていません」がぶつかるのは、たいていこの後です。
この記事で挙げた5つの確認事項は、突き詰めれば境界線を先に引くための質問です。どこまでが相手の仕事で、どこからが自分の仕事なのか。それが見えていれば、支援者を疑う必要はありません。
私自身は、補助金を「事業に使うお金の割引制度」のようなものだと捉えています。割引そのものが目的になることはなく、問われるのはその後にどう実行したか。これは私の見方であって、唯一の正解ではありません。ただ、この捉え方でご一緒したいと考えている、という話です。
判断の材料になれば幸いです。
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